こんにちは。
BeckのB面発掘、気づけばもう第8段『Sissyneck』です。
シングル『Sissyneck』
1997年6月リリース。アルバム『Odelay』の10曲目で、同作から4枚目のシングルカットになります。
こんな良曲がアルバム終盤の10曲目に潜む『Odelay』やばいっす。しっぽまでアンコがぎっしり詰まったタイ焼きのようなアルバムですね(いまのタイ焼きはだいたいしっぽまでアンコ詰まっているので、あまり適切な表現ではないですね。)
ファンクのリズムにカントリーをまとい軽快な雰囲気です。本曲においても他曲からいくつかのフレーズを取り込んでいるわけですが、他所から持ってきたとは思えないほどBeck自身の色に染めていますね。記事の最後の方におまけとしてサンプリング元の音源リンクを貼っていますので、もしよろしければご参照ください。上手なサンプリングは、再構築であり再発見ですね。
それではB面。今回は2曲だけです。
The New Pollution(remix by Mickey P)
Beck - The New Pollution [Remix By Mickey P.]
原曲の様々なフレーズを活かしたリミックス。
「The New Pollution」を構成する各フレーズについて、そのアイデアや音色の面白さを改めて教えてくれるようです。リズムには、マーチングのようなドラムロールが入って原曲とは違った躍動感を与えています。後半に、独自のベースラインをフューチャーしたところも聴きどころですね。
Feather In Your Cap
『It’s All In Your Mind』のB面でも収録されていた弾き語り曲が、簡単なバンド編成で再録されています。原曲も好きですが、この自然なバンドアレンジも、奇をてらった感じがなく好感が持てます。いや、好感が持てるどころか、Beck曲の中で今一番のお気に入りです。
静かなギターのストロークから始まり、2小節目でドラムとベースがゆったりと合わさります。派手なクラッシュシンバルでなく、ライドシンバルで控えめに「チーン」と始めるところがニクイ。すき間が多分にある演奏で、プレイヤーの息遣いを感じることができます。名曲「Totally Confused」を彷彿とさせますね(※1)。
一つ一つ大切に奏でられた音の中で、未熟と円熟の間を行き来するBeckの穏やかなボーカル。その佇まいに惹きつけられます。
間奏では、トレモロの効いたオルガンが暖かみのある色を加え、アウトロでは、ピアノが何かを悲しむような、喜びを包括しているような、様々な思いを届けてくれます。
含みを持たせた曲の終わらせ方ですが、それがとてもしっくりきて、リピートしたくなります。こういう繊細で素朴なBeckも大好きです。1994年の録音。
(※1)クレジットを見ると、ドラム以外は全部Beckの演奏でした。ドラムはBeckと良く組んで仕事しているジョーイ・ワロンカー氏。Atoms For Peace(レディオヘッドのトムヨークやレッチリのフリーが在籍するバンド)のドラムだったとは知りませんでした。
まとめ 「Feather in Your Cap」路線という未来
「Feather in Your Cap」と、次のシングル『Jack-Ass』に収録された「Brother」、そして『Odelay』のラスト曲「Ramshackle」の3曲は、アルバム『Mellow Gold』の時のプロデューサーと行った録音とのことです。
『Mellow Gold』の次にどんな作品を作ろうかと、この3曲を録音したそうですが、Beckはこの方向で進むことを良しとしなかったみたいですね。その後にダスト・ブラザーズと組んで、ヒップホップ路線に舵を切って『Odelay』を完成させました。結果的に大成功したわけですから、路線変更は英断だったなと思います。
でも、「Feather in Your Cap」好きとしては、この路線でアルバム出していたらどうなっていたかなと少し考えてしまいますね。そういうのも楽しいです。
おまけ 「Sissyneck」サンプリング元を紹介 +α
主題のベースラインは、Country Funkの「A Part of Me」をサンプリング。1分あたりのところですね。そこから急に曲が変わります。
イントロの口笛はDick Hymanの「The Moog and Me」のイントロから。
オルガンのラインはSly&the Family Stoneの 「Life」から。
「Feather In Your Cap」を聞いて思いだした曲、サニーデイ・サービスの 「baby blue」です。プレイヤーの息遣いを感じる曲といったらこれです。バンドという生き物の素晴らしさをまざまざと伝えてくれます。曲全体で一貫した空気管が素晴らしいですが、随所でのドラムのフィルインや、アウトロのピアノとベースの絡みには、いつ聞いても痺れます。人生の最後に聞きたい曲です。
Beck記事のまとめです。
このジャケットが欲しくて買いました。