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BECK『Devils Haircut』 B面こそガチ⑥

こんにちは。

Beckのシングル曲のB面に焦点を当てた発掘プロジェクト、第6段『Devils Haircut』です。ロックの日(6月9日)にピッタリの1枚ですね。

 

シングル『Devils Haircut』


Beck - Devils Haircut

前回の「where It's At」に続き、これまたベックの代表曲の一つで、大ヒットアルバム『Odelay』の1曲目でもあります。

イントロから聴く者の首ねっこ掴んでベックワールドに引きずりこみます。荒々しく無骨なギターリフ、「キンキン」と地下監獄の鉄檻を叩いているような金属的な効果音、そして「Devils Haircut」というタイトルが醸し出す妖しげで殺伐とした空気感。こうやって書いてみるとゴリゴリのハードロックのような曲紹介ですが、実際に聞いてみるとポップだから不思議です。個人的には『Odelay』裏ジャケットの絵(下)の世界観とも絶妙にシンクロします。言うなれば「きもかわいい」ならぬ「きみょかっこいい」(奇妙でかっこいい)感じです。

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これは「きみょかわいい」かな。

「Devils Haircut」のPVは、Beckがカウボーイハットと革ジャンできめ、ラジカセ抱えてニューヨークを練り歩きます。そのBeckをスパイが追っかけているというのが筋らしいです。このPVは、前作「Where It's At」と後作「The New Pollution」ともに、MTVミュージックアワードを受賞しています。売れてる!音楽業界の天下取りにいってる!っていう勢いを感じます。ただただ、普通にかっこ良いので、BeckのPVとしてはパンチ弱いんじゃないかなあとは思います。ベタですが、グレムリンのような謎生物が奇々怪々にうごめくB級サブカル映画のようなPVだったらな、と夢想します。

 

ベックはサンプリングをロック界隈で多用したことでも高く評価されています。そのオリジナルとなった音源を聴いてみると「ふむふむ、なるほどね」と二度おいしかったりしますね。参考に2つご紹介します。

 

Devils HaircutのメインギターリフはThem「I Can Only Give You Everything」から。


Them - I can only give you everything

コーラス(サビ)から間奏にかけてのドラムは、Pretty Purdie「Soul Drums」から。


Pretty Purdie - Soul Drums

 

 

それではB面曲を見ていきましょう。

 

Dark And Lovely(remix by The Dust Brothers)


Beck - Dark and Lovely (Devil's Haircut Remix by Dust Brothers)

『Odelay』のプロデューサー、ダストブラザーズによる「Devils Haircut」のリミックス。

イントロはドラムのビートが前面に出ていてシンプルなリアレンジかと思いきや、歌と同時に不安にさせる音像が鳴り、浮遊感を演出。ところどころで顔出すオペラボイスが良い味付けでクスッと笑えます。2番からライドシンバルの刻みが違ったニュアンスを添加。曲の1番、2番、3番と雰囲気を変えて聴かせてくれます。面白いです。ダストブラザーズのアイデア、遊び心が楽しめます。

 

American Wasteland(remix by Mickey P.)


Beck - American Wasteland (Devil's Haircut Remix)

これも「Devils Haircut」のリミックス。

これは一言、パンキッシュ!淡々としたBeckのボーカルの裏でドラム、ベース、エレキギターが激しく疾走します。原曲のアウトロで入る「Devils Haircut In My Mind」のシャウトを活用して、新しい聴きどころ(サビ?)を作っています。

 

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Beck - 000.000

久々にリミックス以外のB面曲。

マラカスと逆再生音をミックスした謎イントロ。ボーカルには強めにエフェクトがかかっていて何を歌っているかは分かりません。インターネット上で歌詞検索をしても、オフィシャルで歌詞を公開していないのと、ネイティブでも聞き取りずらいためか「?」が多かったです。この曲は、アイデアを形にすべく実験的に色々やった跡地、というか、結果的にどうにもなっていないものを見せてもらった感覚ですね。これは問題作。

この曲に対するBeckのコメントがありました。

Rolling Stone誌は2008年に、ベック氏は「曲のタイトルをどのように発音すればよいかわからず、言葉を解読することさえできない」・・・「間違いなく歌詞があり、とても意味のあるものだったと思う」とベックは付け加えた。

http://whiskeyclone.net/ghost/songinfo.php?songID=338

やっぱりこれ、アイデアの試行錯誤の段階からハネることが出来なかった失敗作なんじゃないかって思います。結果的に『Odelay』には収録されなかったわけですし。でもまあ、失敗作だとしても、作者が時間と心血を注いで形になったものなわけで。それが不格好に成長したからといってダメなのではなく、その時に作られたその作品からしか感じ取ることができない「意味」や「愛」があるのだと思いました。そう考えていくと、これをB面として収録した意味もわかってきた気がします。「こういうものが生まれたんだけど、どうよ」とBeckがニヒルに笑いながら話しかけてきているようです。

 

Devils Haircut(remix by Noel Gallagher)


Beck - Devils Haircut (Remix by Noel Gallagher)

あのOasisのノエル・ギャラガーのリミックスです!これを聴いたBeckは「だせぇ」と言ったとか、言わなかったとか。歪んだギターの音像や、マラカス・タンバリンの使い方がOasisっぽいような気がします。ノエルファンの方には、物見遊山で一聴をお勧めします。

 

Groovy sunday(remix by Mike Sipmson)


Beck - Groovy Sunday (Remix by Mike Simpson)

これも「Devils Haircut」のリミックス。

原曲に忠実で、より陽気な雰囲気に仕上がっています。「Groovy Sunday」というタイトルはしっくりきますね。後味の良い映画のエンドロールで流れていそうな雰囲気です。

 

Lloyd Price Express(remix by John King)


LLoyd Price Express

これは「Where It's At」のリミックス。

イントロが特徴的です。これはアメリカの広大な砂漠をオープンカーでブンブンひた走りたくなる感じです。

 

Clock


Beck - Clock

陰湿かつポップ。こういう二面性の共存はそそられます。ただ、その調子で最後までいってしまうので、個人的にはもう一捻り欲しいところです。1995年9月録音でオディレイ同様、ダストブラザーズとの共作なんですけどね。

 

まとめ B面らしいB面曲かな

リミックス3曲、未収録2曲でした。初期三部作(Loser、Pay No Mind、Beercan)の時のようなシンプルに楽しめる面白さは薄いかなと思います。

「Clock」に関して言うと、予定調和というか、Beckとダストブラザーズならこれくらいやるだろう、アレンジもう少し詰められたんじゃないか、という物足りなさを感じます。いかにもB面曲というか、なんか消化不良です。もっと伸び代があったと思うんですけどね。

逆に「000.000」は、このレビューを通して好きになることができて良かったです。

 

『デビルズヘアカット』は2枚所持してます。

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Devil's Haircut

Devil's Haircut

  • アーティスト:Beck
  • 発売日: 1997/06/17
  • メディア: CD
 

 

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hitoribukatsu.hatenablog.com