いそいそと1人部活

己を知る取り組みとしてのブログ

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狂気じみた吉井和哉の内省『YOSHII BUDOKAN 2008』

2008年12月28日、日本武道館でのライブ。

『VOLT』の限定版にも付いてるよ

エマがいるのは嬉しいけど、日下部氏が外れたのは同じくらい寂しいな。

1曲目が「ビルマニア」。『VOLT』の顔となる一曲だが、リリース前だからか客席の盛り上がりが今一つな気がする。続いてTHE YELLOW MONKEYの「I CAN BE SHIT, MAMA」。割とダークなイメージを持っていたけけど、改めて聞くととてもポップだ。『LIVE LIVE LIVE』では「Do The Flipping」「Biri」のオープニング3連発を見てきたから、この2曲のスタートはとても新鮮である。

3曲目の「Do The Flipping」はフラッシュが多用されて見にくい。世界観を作っているようで誤魔化しているようにも見える。続く「黄金バッド」も今一つ入ってこない。曲はカッコ良いんだけど、若干乗りづらくて、会場が温まっていない序盤にやるのはもったいないと思う。

「SIDE BY SIDE」エマのストラトギターの音が良い。今の所一番良い。ねっとりと歌の世界に入っていく。続く「ルーザー」「BLOWN UP CHILDREN」で会場の空気をとらえたような感じがする。そしてここで「NAI」がくるか。毎回セトリに感心する。淡々とした前半から後半の畳みかけが圧巻。映像でも良かったけど、ライブ現地では後半のドラム音がとても大きく響いて良かったといったレヴューを見て、確かに会場でしか受け取れない音圧あるよなと、少しうらやましく思った。

そして「CALL ME」。吉井和哉の代表作かつライブの定番曲。何度も見ていて食傷気味になるが、今回は流れが良いのか味わえた。味わえれば名曲なのは間違いない。また一段、己の世界に深く潜った感じの表現だ。と思ったら、「TALI」で一気に浮上する、この緩急は映える。武道館を包み込む、つかの間の多幸感。

作品ではRadioheadのカバー「creep」がカットされおり、続くのは大名曲「天国旅行」。…なんというか、この歌に限っては、90年代後半の吉井和哉しか歌えない、自暴自棄に自己陶酔できるのは作品を作った当時だけだ、と思っていたので半信半疑で画面を見つめる。ただ1人、エレキギターをかき鳴らす吉井和哉。曲の世界観に、精神の奥深くに、沈んでいこうと試みているようである。ギターから垂れ流されるノイズにより、会場に不穏な空気が立ち込める。その戦々恐々とした音が止み、一瞬の静寂が訪れる。吉井和哉が歪んだギターストロークを決め、狂ったような顔でカウントを叫び、ドラムフィルがバンドを連れてくる。この入りだけでゾクゾクした。素晴らしい。この曲では他の曲では見せない吉井和哉の表情が見れる。最後に「つくしんぼ あああああぁぁ」を歌い上げ、演奏の熱量は最高潮を迎えていく中、1人こぢんまりと弾いて、虚空を見上げる。精神と肉体の暴走と静寂が時間差で絡み合う後奏。素晴らしい。この曲に出会えてよかった。この曲を超える曲が世にあるのか。超えるというか、特異なので類似する曲を知らない。圧倒的なアートだ。素晴らしい。

この顔・・・

続く「シュレッダー」はミラーボールが綺麗。ここでの絶唱も素晴らしい。30才の叫び(天国旅行)と40才の叫び(シュレッダー)、の並びはどちらも良かった。そして新曲「Snow」。これも良曲。シリアスさが少し抜けたかと思ったがそんなことはない。後奏は圧巻。「バッカ」のサビにて白い光で照らされてようやく安心する。後半の天国旅行からシュレッダー、Snow、バッカの4曲の流れ、だいぶシリアスでストイックな表現だった。こんなにミドルテンポの曲を立て続けにやったことあるのかな。でもオラ本当はこういうのが見たかったんだ、と思う。そして「WEEKENDER」。最後に1曲だけアッパーな曲やってももはや蛇足だろと思ったけど、良かった。長いこと潜水を続けて、光あふれる大地に久しぶりに足をつけたような感覚。解放感。素晴らしい。吉井和哉の目が輝いていた。凹んでいた分だけ輝く曲だ。

映像作品にはアンコールの収録は無しなのでここでおしまい。

 

エピローグ(感想や調べもの)

今回もよかった。毎回よかったばっかりの感想だ。笑

見どころはやはり「天国旅行」「シュレッダー」「SNOW」「バッカ」の4曲。狂気じみていたな。それ等に続く「WEEKENDER」も良かった。MCもカットされているからか、すごくストイックな印象のライブ映像だった。アンコールでは「崖の上のポニョ」をエマと歌ったり、「マンチー」や「見てないようで見てる」など明るくてアッパーな曲をやっているので、それ等があればまた違った印象になりそうだ。

THE YELLOW MONKEYの曲は「I CAN BE SHIT, MAMA」「NAI」「天国旅行」「見てないようで見てる(※未収録)」と『SICKS』期に集中していたのも個人的にはポイント高い。

これまでのYOSHI武道館を振り返ると、伝説のライブ にすると気張って攻めに攻めた2006年、自然体でエンタメ要素も楽しめる2007年、そして内省的でストイックな2008年、と全く異なる感想だ。本当に毎度毎度面白いな。

 

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