『YOSHII BUDOKAN 2009』
2009年12月29日
日本武道館でのライブ
SEもなく、あっさりとした登場。ドラムはジョシュ様だし、ベースもレコーディングに参加しているというジャスティンらしい。ギターはジュリアンとバーニー(※バーニーは日本人)。果たしてどうなることか・・・そして始まる「JUST A LITTLE DAY」。驚きの一曲。超強力なロックの猛者が後ろにいて何故これが一曲目なのか。・・・と言ったものの、全然悪くない、どころか良い。登場SEで期待を煽ることもない中から、ゆったりと噛み締めるような演奏で会場の空気を作っていく。にくい始まり方だ。この「JUST A LITTLE DAY」は『WHITE ROOM』の中では、そんなに好きな方ではなかった。他の曲が良すぎるのよ。でもこうやって武道館という大きい会場で奏でられると、良く似合うというか、懐の深い曲だなと思った。続く「ALL BY LOVE」にも驚き。こう来ますか。ライブ後半にやるイメージだから新鮮。さわやかに晴れた朝に軽いジョギングをして良い汗かいたような爽快感に溢れている。ベースのアタック音がビンビン響いてくる。そして「Do The Flipping」。2nd、3rd、4thとアルバムから順番に一曲ずつ佳作を選んで配置された形だ。なので次は「VOLT」から来るかなと予想していたら、マイフェイバリットの「LIVING TIME」ではないか! なんという選曲! THANK YOU YOSHII KAZUYAのとき以来だよな。テンション上がるわ。ボーカルにも熱がこもり出して、ジュリアンが飛び跳ねている。控えめながらジョシュ様のフィルが曲に鮮やかな花を添える。いいねぇ。そしてまた『39108』から「黄金バッド」。曲は好きなんだけどライブ映像みると今一つに感じることが多いこの曲。しかし・・・今回は過去最高だった。演奏のタイトさと演者達の集中力が過去一だろ、これ。ラストは白いライトでバチバチに照らされるジョシュ様を息を吞んで見つめる。おおお。
「ウォーキングマン」。今回はフライングVではなくレスポールを担いでいる吉井和哉。今回も良い。この曲はライブで外さない。アウトロのバーニーのソロは演奏、魅せ方、顔芸、すべて最高だ。ソロをクールに引き継ぐジュリアンも良い味。この流れだと次は「ヘブンリー」かと思いきや、まさかの「LONELY」!これまた『39108』からの嬉しい裏切り。音源よりキーが半音低いな。
「CALL ME」をはさみ、知らない曲がきたと思って調べたら、1st収録の「FALLIN' FALLIN'」か。(名盤と誉高い1stは聞かないで大事に取ってあるのです。)サビがめちゃ良いな。明るくふざけた感じの音像なのに歌詞は結構エグい。曲全体がものすごいバランスで成り立っている。このひねくれたいかれ具合がYOSHI LOVINSONっぽい。こんな雰囲気を他のアーティストで感じたことないな。そこに「I WANT YOU I NEED YOU」が続くのだが、前曲からの流れが絶妙すぎる。毎回この2曲を続けて観たいわ。パンキッシュでキレてる。このライブの一つのピークを迎えたな。「I WANT YOU I NEED YOU」も何回も観ているけど、これも今回が過去一だ。「魔法使いジェニー」で盛り上がりを引き継いで会場を躍らせる。始まりのKeyはたぶんAで、そこからC#mにうつった時におそらくKeyがEになっている。ただ、C#mというコードだけ見ればKeyがAのときはⅢmだし、KeyがEのときはⅥmなのでどちらもあり得る。どっちのKeyなのかを曖昧にすることでリスナーに不思議な(魔法にかかったような)感覚を与えている。そして、またサビでKeyがAに転調する。サビ前のコード進行がAからB(ⅣからⅤ)で、Eに帰結すると思わせてAにいくのは斬新な肩透かしで面白い。笑
力強い「BLACK COCK'S HORSE」から「BEAUTIFUL」。ライブでやられなさすぎて忘れてたぜ、この大名曲を。イントロのアコギのストローク良すぎてコピーした。Eadd9(×79977)からC#add9(×46644)だね。このイントロの煌めく朝日のようなおぼろげな浮遊感は3度の音が入っていない(和音を明るいか暗いかを決める音)からなんだな。普通の進行だったらEからC#mだけど、こうしてしまうとなんの変哲もない。やっぱり良いわ。最高。分かりづらいけどCメロだけkeyがEからAに転調してるっぽい。この転調は魔法使いジェニーと同じだ。ギター持ちながら見たから、ギターの話が多めである。
「TALI」明るいのに明確な影がある。世界が少しでも良いものであるようにと願うような歌声である。「ONE DAY」は「Winner」と並んであつらえ向きな感じが良くも悪くも・・・という印象だったが、熱く、力強く歌いこなすと曲の持つエネルギーが何倍にも増幅される曲だった。ライブで映える。一気に好きになった。熱量を引き継いだ「ビルマニア」も画面に釘づけになった。そして本編最後はやはり「ノーパン」。何度観ても凄まじい。こういう自我を解放させる曲を、定期的にアップデートして生み落とせることがすごい。
アンコールは「BELIEVE」でスタート。この曲は吉井和哉の代表曲の一つになって何度も歌われると思ったけど、あまりそうはなっていない。残念なことではなく、新しくできている曲も「BELIEVE」に負けじと良い曲ばかりということなのだ。一緒に歌ってくださいと「ルビー」。音圧ある。この曲とかヘヴンリーとか魔法使いジェニーは、音源で聴いてた時は地味な印象だったけどライブで見る度に好きになっていく。改めて考えると、1stアルバムから5thの『VOLT』にかけて、生まれる曲がどんどんライブ映えする曲、ライブで感情移入しやすい曲になってきたなと。1stとか2ndはライブと音源どっちで聴くのが良いかと聞かれたら返答に悩むけど、4thや5thはライブの方が良いと断言できる。
そして「WEEKENDER」やっぱ最高だ。ライブの終盤でお疲れ様と労いながら一緒に歌いたい曲。サビでのジュリアンダンスがいいよね。「FINAL COUNTDOWN」「Shine and Eternity」で、この辺りは定番的なハッピーエンドだね。
エピローグ(感想や調べもの)
今回のライブは、吉井和哉のソロが好きな人にはご褒美的な大満足の内容だったであろう。『VOLT』のツアー「宇宙一周旅行」を見終わった後、吉井和哉のライブでこれ以上に新しい感動は得られないんじゃないかと勝手に思ったけど、そんなこと全然なかった。笑 潜在的に自分が今一番見たいであろう吉井和哉のライブを見せてくれたと思う。毎度思うけど曲順が素晴らしい。吉井和哉本人がこのセトリを考えているなら ”演出家” としての彼の才能もすごい。どれだけ客観的に自分の作品を見れているのだろう。「FALLIN' FALLIN'」と「I WANT YOU I NEED YOU」を繋げて聞かせるなんて発明だ。しかも、今回はTHE YELLOW MONKEY時代の曲は一切なし。ソロでアルバム5枚分の曲があり、それだけで素晴らしいライブが構築できることを証明してしまった。映像ではカットされていたが、MCで「今日は吉井和哉ソロの歴史グレイテスト・ヒッツです」と話していたようだ。2006年の武道館は吉井和哉ソロとイエモン時代合わせたベストライブだったけど、今回は吉井和哉ソロのみのベスト、集大成で間違いない。1曲目「JUST A LITTLE DAY」でゆったり始めたのはその自信の表れだったんだな。これだけの楽曲と最高のバンドが揃ったという自負があった。観終えると妙に納得する選曲だ。(…いや、でも個人的な好きで言えば一曲目は「NATURALLY」だとより良かったかも)
これで『1228』は4枚観終えた。あと6枚。そこにはどんな物語があるのか。楽しみ。
ちなみに、大阪城ホールでは、武道館のセトリから「TALI」「FALLIN' FALLIN'」が外れて「20GO」「PHOENIX」「欲望」がイン。そちらも良いな。