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【診断士】悩ましい回答。でも「どっちでもいい」

こんにちは。

 

中小企業診断士の2次試験の勉強は、これまでの勉強ライフの中で最も面白いものでした。その理由の一つとして、解答の曖昧さがあるのかなと思います。

 

 

解答が割れた「アンゾフの製品・市場マトリクス」

令和2年度の事例Ⅱ、第3問(設問1 )アンゾフの製品・市場マトリクスについての回答は、各予備校や受験生の間でもかなり割れていました。

「これは新製品開発だ」

「いやいや、新市場開拓戦略だよ」

「ということは多角化戦略とも言えない?」

等々、今年の盛り上がりポイントの一つでした。

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喧々諤々


そんな中、受験予備校のEBAが、本年度の各事例を分かりやすいストーリーでまとめてくれてました。その事例Ⅱでは、先ほどの「製品市場マトリクス」についても触れています。

www.ebatokyo.com

 

その件については「どちらが正しいのかわかりませんが、どっちでもいい気がしています」という強烈なパンチラインで、この議論に終止符を打っています。笑

 

この「どっちでもいい」という考え方は実に診断士の2次試験らしいなと自分は思いました。それについて、今年考えていたことを例を挙げて説明したいと思います。何が正解か分からずに悩む受験生にとって、何かしらの手掛かりになればと思います。(…逆に悩ませてしまうかも)

 

 

「どっちでもいい」例題

【例題】H30事例Ⅰ第4問(配点20点)

A社が、社員のチャレンジ精神や独創性を維持していくために、金銭的・物理的インセンティブの提供以外に、どのようなことに取り組むべきか。中小企業診断士として、100字以内で助言せよ。

 

人事施策の問題です。与件文や設問文を通して、色々な施策が考えられますが、一つの側面として「新卒採用をするか否か」という切り口について予備校で解答が割れました。

 

E社は「新卒採用する」、T社は「新卒採用しない」という方向性でした。(※T社は「新卒採用しない」ので、解答に書かれていません。)

 

これだけ聞くと「なんだよ!どっちが正しいんだよ!」となるじゃないですか。そこで「新卒採用する・しない」の結論ではなく、何でその結論に至ったかの"根拠"に着目して見ていきます。(※参考書はすでに処分してしまったので、私の記憶とファイナルペーパーのメモから作成しています。詳細は原本ご確認ください。解答の根拠を複数集めて比較するのはとても面白いのでオススメです。

 

 

E社が新卒採用を勧める根拠

E社が新卒採用を勧める根拠を要約しました。

 

設問で要求されている「社員のチャレンジ精神や独創性を維持」のために、新卒社員を採用して、多様な人材を社内に取り入れることで(固定観念にとらわれない発想が生まれ)、組織が活性化するから。

 

設問要求に対して適切な1次知識で回答されており、説得力があります。

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T社が新卒採用を勧めない根拠

次に、T社が新卒採用を勧めない根拠を要約しました。

 

A社は中途採用で教育コストのかからない即戦力を得ており、また、中途採用者は最初から能力があるため、成果主義も機能しやすくなっている。しかも、A社の離職率は低く、実力主義が根付いている。よって、新卒採用した場合、教育にコストがかかる上、能力の低い新人を抱えなければならず、少数精鋭で多くの売り上げを上げるというA社の体質も崩れる可能性があるから。

 

A社の成果主義(実力主義)の成功は、中途採用によるものであり、新卒採用をすると少数精鋭が薄まってしまうためすべきでない、ということですね。与件文から根拠を導き出しており、これも説得力あります。

 

E社の解答とT社の解答、どちらが妥当性があり、どちらを解答に反映するべきでしょうか。

 

これ「どっちでも良い」と思いませんか。

 

私はこの問題の解説を読んでいて、その結論に論理的な根拠があれば良いんだなと考えるようになりました。

 

なので、解答を書く際には、何故それが解答として適切なのか、その根拠を見えるように書くということを意識していました。

 

横道にそれますが、「権限移譲は第3問・第4問どちらの解答となりえるか」でもE社とT社で解答が割れていました。笑 これらの解説も興味深かったです。このように多数の解答を比較検討すること(1人勉強会)が思考訓練になりましたし、自分の実力アップに貢献したと考えています。

 

※このような「解答の方向性が多数考えられること」が、模範解答が示されない(示せない)大きな理由かなと個人的に思っています。

 

 

余談:(勝手に感じる)ふぞろいのロック魂

 

以下、自論です。

上記の問題について、「ふぞろい」の答案では、施策を6つ書いていました。ふぞろい流採点ではもちろん高得点(20点)。私はこれに違和感を覚えました。「一般的な施策ばかりたくさん並べて、この施策をやる意味が良く分からない。当社のことを本当に考えてくれているの?」という声が相手先企業から聞こえてきそうだ、と思ったからです。

 

設問文の要求に沿って、与件文から根拠を拾ってきて、こういう理由だから、これをやりましょう!というのが助言問題の基本的な解答マナーだと思っていますが、施策を6つも盛り込むと根拠の部分が薄くなりがちです。解答が思いつかない場合、キーワード羅列は一定の効果があるとは思いますが、それが模範解答なのかというと、私は疑問です。

 

考えすぎかもしれませんが、もしやこれって「ふぞろい」なりの自己批判なのかなと思いました。「うちの採点だと、施策たくさん並べると高得点になるけど、これで本当に高得点取れると思う?」と受験生に問いかけているように感じました。ふぞろいの限界を、ふぞろい自身が十分に分かっており、それをあえて分かりやすく伝えてくれたのかなと。

 

この加点要素のキーワード羅列が「ふぞろい」らしさであり、それに振り切ることで学習者にとって圧倒的に分かりやすいものとなり、大きな他社との差別化要因(強み)であると思います。それを貫き通す姿勢に、勝手ながらロック魂を感じました。

※追記(2021.9.8)

上記で「ふぞろい」を揶揄するようなことを書いてしまいましたが、試験のことを良く研究されており、合格のためには最も適した教材だと思っています。大変お世話になりました。ありがとうございました。

 

 

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読めば読むほど味が出る過去問