いそいそと1人部活

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曽我部恵一『ヘブン』2018 その2

こんにちは。

前回に続いて、曽我部恵一さんの『ヘブン』のレビューです。

 

hitoribukatsu.hatenablog.com

いま2周目を聴きながら書いている。

 

ラップというのは一般的に歌のメロディがない。今回のアルバムでは、メロディが全くないということではないけれど、今までのようなメロウな歌が占めるわけではない。

 

曽我部さんの作る歌、メロディが大好きな自分にとって、全曲ラップという事実が衝撃だった。最強の武器を放棄していいのか、と思った。いま考えると、それがリリース直後に購入をためらった理由だったな。

 

サニーデイ・サービスを含め、これまでの曽我部さんの作品を聴くと、彼の声で歌われるメロディが好きすぎるので、どうしてもそちらに耳が向いてしまう。

 

でも今回、そのメロディを手放したことによって、彼の音楽のアイデンティティというか、本質に、今までで一番近づけた気がする。これまでは曽我部さんを家の外から眺めていたのが、玄関のドアを開けて家の中にお邪魔したような感覚。そして、開けてビックリ。そこには彼の肥沃な混沌が渦巻いていた。

 

表現されている音像の情報量がすごい。メロディという「最強の剣」がなくても「たたき上げの拳」で十分戦えるという感じ。あらゆるものを喰らってきた百戦錬磨の獣のような風格。

 

いま5曲目「野行性」が流れている。・・・かっこいいじゃないすか。彼自身を一番表現できるのはヒップホップというフォーマットなのかもとさえ思ってきた。6曲目「mixed night」は落ち着いたビートにメロディが乗る。フィッシュマンズみたいでこれも良い。

 

* * *

 

曽我部さんは、ラップは自分でやるもんじゃないと言っていたけど、やっぱりやりたかったから自分でやった、とのこと。果敢にトライして一つの答えを私たちに見せてくれた。

 

大好きなアーティストがこういう活動をしてくれると、本当に勇気をもらえる。自分もブログを始めたばかりで右往左往しているけど、「大丈夫。やりたい事をやればいい」と背中を押されている気分だ。

 

ヘブン [ROSE-235]

ヘブン [ROSE-235]

 

* * *

 

◇ CDというフィジカル版のリリースについて感じたこと

 

下記、音楽ナタリーのインタビューより抜粋です。 

 だから「ヘブン」は千枚単位とかでプレスを区切っていこうと考えているんです。そのほうが売れた数を実感できるし、CDがあまりにも貴重なものじゃなくなってしまったのも寂しい話だなと思っていて。せっかくこっちも一生懸命作って売って、リスナーも身銭を切って買ってくれているわけだし、CDをもっと貴重なものにしたいんですよね。そうしてCDを売る意味を探っていったら、CDが本当に必要なものなのか、それともいらないのかをちゃんと考えられるかなって。CDを売るんだったら、その意味をちゃんと持っていたい。

https://natalie.mu/music/pp/spotify06natalie.mu

今回は届いたCDには、「2ndプレス」とシールで貼ってあった。大量に生産されたものとは一味違う印象を受けた。初回限定版は使い古された販売方法だけど、2ndプレスというのはなんだか新鮮。手元に届いた2ndプレスは、最初に買うのを躊躇した自分の気持ちを反映しているようで愛おしい。彼の思惑通り、買い手にとって特別な感じがあった。

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